少し前に、Xでどうやって翻訳者になったのかみたいなハッシュタグがタイムラインにわっと出てきた時期がありました。私も一応翻訳者の端くれではあるんですが、なんか偶然翻訳者になれちゃった的なへっぽこな感じの人なので、公に言うのもどうかと思ってたんですが、こういう翻訳者もいるんだな的な参考になるかもと考えを改め、まとめてみることにしました。
どこで中国語を勉強したか
そもそもの中国語をどこで勉強したのかっていう話ですけど、大学の中国語学科だったからですね。元々は英語をずっとやっていたんですが、大学受験に失敗して何とかひっかかったのが母港である大学でした。当初は中国語を勉強することに情熱的ではなかったんですが、そんな私を見た友人に怒られて心を入れ替え、勉強するようになったという感じです。大学では交換留学のプログラムもあったんですが、同級生が大勢いる環境では絶対に中国語を使わないだろうとふんで、日本に残る決断をしました。その後短期留学に行ったり、ゼミの合宿で中国に行ったりしましたが、トータルで2ヶ月ほどなので留学したと言えるほどではないかなと思います。
大学を卒業後、翻訳学校に少しだけ通ったり大学時代にお世話になった先生のゼミとかオープンキャンパス的なものに不定期で通いました。今の中国語力はだいたい大学4年間とゼミ合宿がもとになっているかなっていう感じです。特にゼミ合宿はそれなりにハードで、事前にB3用紙にびっしりと「人民日報」の記事がいくつも貼り付けられたものが20枚ほど教材として渡されます。合宿ではそれを当てられた人が一文ずつ訳すわけですが、いつ何が当たるかは分からないんですね。当日に何となく順番は分かりますが、いちいち訳していたら間に合わないので当然予習することになります。ゼミ合宿までにこのB3用紙20枚ほどの教材をどこまで訳せるかやっていたので、自然と数をこなしていたということになるのかもしれません。新聞なので、原文の文体は硬いですが、それが逆に産業翻訳系の硬い文章を訳すには役立っているなと今になって思います。
翻訳者になったきっかけ
大学在学時から、いきなり翻訳者になりたいと言って先生方を困らせた私なのですが、当然私程度の実力ではそんなことできるでもなく、フラフラとしていました。やりたくない仕事をいやいややって、メンタルやられて…みたいなのが続き、たまたま当時珍しかったゲームのローカライズの仕事に応募していきなり社内翻訳者となりました。翻訳会社に入社したのではなく、ゲーム会社内のローカライズ部門だったんですが、なんかすんごい適当なところで、CATツールもつかっていませんでしたし翻訳量が多すぎてチェックとかそういう余裕が全くなく、訳した物をそのまま本番環境へという恐ろしい現場でした。なので、翻訳業界の知識がほとんどないまま作業だけやっていた感じ。その後、翻訳会社に転職してMTPEのプロジェクトに携わったりちょっとだけコーディネーターをやったりして独立。業界の知識が浅いまま何となく独立して、先に退職して独立していた先輩のツテで仕事を貰って…という感じで、ほぼ幸運に助けられてフリーランスのキャリアを積み重ねていったという印象です。だから、何となくどうどうと翻訳者ですと言うのにすこしためらいがあったりします。
役に立ったと思った参考書など
そんなへっぽこな翻訳者ですけど、大学生の頃から今まで、色々な中国語の参考書や問題集をやったりしてきました。個人的にこれは役に立ったというものをいくつか挙げようと思います。
「チャイニーズ・プライマー」
大学1年の時の教科書(のうちひとつ)でした。当時は上下巻に分かれていました。結構な厚さで、文法とかが説明されています。練習問題は少なめかな。音声CDも付いているのがいいですね。
Why?に答える初めての中国語の文法書
これも定番中の定番じゃないかと。基礎的な内容からじっくり勉強できていいです。
論説体中国語 読解力養成講座
これは当時うちの大学でトラウマとも呼ばれていた講義の一つ。前に書いたゼミ合宿がまさにこれ。レベル1から初めてレベル10までの難易度で新聞記事や見出しをひたすら訳していくという内容。とにかく問題の量が半端ありません。大学1年当時、これの半分ほどの教科書をぽんと渡され、「春休みまでに最低1週はやっておくように」と言われて「大学行ったのに宿題あんのかよ!」と思いつつもしぶしぶ1周やりました。でも、ちゃんとやっておいて良かったとは思います。この先生が開講されている講座はレベル1から30まであるんですね。レベル1から10までは8.0点取れれば合格して次のレベル。11以降は8.5、21以降は9.0で、レベル30まで。何度も挑みましたが、レベル29どまりでした…。とはいえ、新聞であれば辞書がなくてもある程度読めるようになりましたし、分からない単語があっても、文の構造をある程度きちんととらえられるようにしてくれた、大変ありがたい一冊でもあります。
全体的に硬い文章ばかり勉強してきた感がありますね。今のようなゲームとか、マンガみたいなものは特に学生当時はほぼ目にしませんでしたし。ただ今は中日翻訳ってゲームとか漫画の方が多いので、今後その分野をどう勉強して行くのかっていうのがプロとしてより質の良い訳文を創る鍵になってくるかと思います。そういう参考書などは今のところ多くはないので、自分で試行錯誤しながらやっていくしかないなと感じています。

